退任の御挨拶
前学校長 内田 卓利
この三月末日をもって定年退職いたしました。三年前に赴任
して以来、野水重明会長様をはじめ同窓の皆様には、ひとかた
ならぬ御世話になり、心から感謝申し上げます。三高同窓会及
び各支部の充実ぶりは赴任以前から聞いておりましたが、新型
コロナウイルスの影響で、各支部にお伺いすることができず、
大変、申し訳ありませんでした。しかし、創立百二十周年記念
事業では、多くの同窓生の方々と一年半にわたって準備を進め
ることができました。会員の皆様からは、次第に身近な存在と
してお認めいただき、大変、ありがたく存じております。とは
いえ、直接お会いしていない方が圧倒的に多いのですが、記念
募金には、たくさんの同窓生の方々からご寄付をいただきまし
た。新型コロナ禍ではありましたが、同窓会と学校との間が緊
密になった充実した三年間だったと思っております。ありがと
うございました。
新潟県を代表する伝統校である三条高校へ赴任した頃、「私に
務まるだろうか」と強いプレッシャーと不安を抱え、生まれて
初めて体中に蕁麻疹ができるほどでした。しかし、それから三
年が経った今、同窓会のご協力をいただきながら三条高校がこ
れまでに築いてきた伝統の上に、淡いながらも新しいカラーを
重ねることができたのではないかと思っております。例えば、
県当局の指導を受けながら令和三年度に文部科学省から拠点校
に指定された「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソー
シアム支援事業」です。地域と世界をフィールドにした探究活
動や国内外の学校との交流を通じ、未来を創るリーダー育成を
目指して、学校が一丸となって取り組むことになり、徐々にそ
の成果が見え始めています。しかし、この活動は同窓生の皆様
からのご支援抜きでは語れません。WWLをはじめとする場面
で、たくさんの方々から講演や講義等で生徒への指導に関わっ
ていただきましたが、その多くは三条高校卒業生でした。また、
創立百二十周年記念募金や海外交流事業支援でいただいた多く
のご寄付により、生徒の負担を少しでも軽くした形で海外研修
を始めることができ、令和五年三月に記念すべき一回目として
十二名の生徒がベトナムへ出発しました。創立百二十周年記念
式典で生徒会長が「毎年、海外から留学生が訪れる学校になり
ました」と述べたように、令和三・四年度でマレーシア、スリ
ランカ、モンゴル、ブルガリアからの留学生を受け入れました。
他にも日本の大学に留学する三十カ国四十名の外国人を招いて
一年生全員と一部の二年生が英語だけの二日間を過ごしたり、
オンラインでモンゴル、ラオス、台湾、ベトナムの学校と交流
を重ねるなど校内には国際色が漂い、海外留学をしたいという
生徒も見られます。
本校の歴史に残る行事として、ノーベル生理学・医学賞受賞
者の大村智先生による講演会を忘れることはできません。在校
生に一流のものに触れさせたいという同窓生の篤い思いとご尽
力により実現したものでした。このように、各地・各分野でご
活躍される同窓生の存在や皆様の人脈、そして母校を思う皆様
のお気持ちに感謝せざるを得ません。三条高校を木に例えるな
ら、まさに三条高校同窓会は肥沃な大地です。
花角知事から理数科設置についての言及がございました。ワー
ルド・ワイド・ラーニングと併せ、数年後には先進的な理数教
育にも取り組むことになるでしょう。定年退職とはいえ、その
道の半ばで三高を去ることは誠に残念ですが、新しい校長のも
とで三条高等学校はより一層発展していくものと信じておりま
す。三条高校は、これからも成長をしていく木です。どうぞ、
引き続き応援を賜りますようお願い申し上げます。
お世話になりました皆様へ心からお礼を申し上げますととも
に、同窓すべての皆様の御健勝と御多幸、並びに皆様の母校・
三条高等学校の発展をお祈りいたしまして、退任のご挨拶とさ
せていただきます
新任の御挨拶
学校長 勝山 宏子
日頃より三条高等学校同窓会の皆様には、当校の教育活動に対して並々ならぬ御理解、
御支援をいただいておりますことに心より御礼申し上げます。
また、昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の困難な状況の中、
創立百二十周年記念事業が盛大にかつ滞りなく行われましたことに
お祝い申し上げますとともに心より敬意を表します。
去る五月一日には、同窓会総会、懇親会が実に四年ぶりに開催され、
私も参加させていただきました。多くの同窓生の方々に直接お目にかかり、
お話させていただく中で、歴史と伝統のある三条高校の校長として着任しましたことに
改めて身の引き締まる思いがいたしました。
さて、全国の高校についてはいわゆる「スクールミッション」を策定することになっており、
県立高校については県教育委員会が、各高校の果たすべき役割や理念について、
学校が所在する市町村などの御意見を伺いながら定め、この三月末に公表したところです。
三条高校のスクールミッションは「創造力を育成し、様々な分野で率先して行動する
グローバルリーダーを育成する学校」と定められました。
これは三条高校の教育方針と軌を一にするものであり、加えて現在取り組んでいる
文部科学省事業「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」
において生徒育成の目指すべき姿とも合致するものとなっています。
文部科学省事業WWLについて簡単に御説明させていただきます。
この事業は、高度かつ多様な科目内容を、生徒個人の興味・関心・特性に応じて
履修可能とする高校生の学習プログラムの開発と実践を担うものとして想定されており、
将来的に、高校生六万人あたり一か所を目安に、各都道府県で高等学校等を拠点校として
整備し、すべての高校生がオンラインなども活用しながらそのコンソーシアムに参加することを
可能とする仕組みを持つことが目指されています。三条高校は県下で一校のその拠点校として
令和三年度に指定されました。現在、その仕組みを活用しながら、主に県内の
大学、県央地区の自治体や企業の皆様の御協力、御支援を受けながら、SDGsの達成を目指すことを
テーマとして教育活動に取り組んでいます。主には生徒達が協力機関と連携しながら、地域の課題
への理解を深めるとともに、海外の高校等ともオンライン交流や実際の相互訪問などを通して、
視野を広げて課題を捉え直し、その解決を目指す「課題研究」がその中心的な教育活動になります。
これまでの普通教育における、教わることによって知識や技能を身につける授業とは学びの形態が
大きく異なりますが、もちろん従来の授業も大切にしながら、
これからの時代に求められる主体的な学びを進めていくことが期待されます。
さらに本事業では生徒たちがあまりに身近すぎて、改めて意識することのなかった
自分の住む地域について、将来の主権者の視点から真剣に考える、という意義もあると考えています。
教育を取り巻く環境が加速度的に変化する中、生徒たちがたくましくそしてしなやかに将来に向けて
自ら未来を切り拓いていけるよう、校長として学校運営に邁進してまいる所存です。
どうぞこれからも当校に対する御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、挨拶とさせていただきます。
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